シリカゲルカラム精製やり方まとめ

実験操作解説

シリカゲルカラム

有機合成では、特に多段階で合成を行う場合は前の反応の副生成物を取り除いておかないと次の合成に影響を及ぼすことがあります。そういった副生成物を除き、収率を上げる上で欠かせないのがカラム精製です。カラム精製は、分離したいものと固定相であるシリカゲルの相互作用によってそれぞれの化合物を分ける操作です。抽出では分けきれなかったものを分けることができます。

本記事では、シリカゲルカラムのやり方について詳しく説明します。

事前準備

1.必要なもの

  • カラム管
  • 三角フラスコ3個~
  • ナスフラスコ
  • 漏斗
  • 洗瓶
  • (カラム管用溶媒溜め)
  • (二連球)
  • シリカゲル
  • 海砂
  • (綿)

2.カラム管の準備

スケールに併せてカラム管を選択します。だいたい、ナスフラスコに入っているクルードとカラム管の径が同じくらいのものを選択するといいと思います。カラム管の上が割れているものは、溶媒溜めを取り付けることができないのでシリカゲルを高く積む場合は溶媒を追加する手間が多くなります。

カラム管を展開溶媒として使用する溶媒で流して洗浄します。汚れている場合や不安な場合は、前日に水道で洗って乾燥機で乾燥させておきます。こっちの方が確実だと思います。またコックを閉じて、上に溶媒を少し貯めてみて漏れがないことを確認します。

カラム管にシリカ止めがついていないものはシリカが落ちてこないように綿を詰めます。綿をちぎって丸めてカラム管の口をふさげるサイズにします。

カラム管のセット

カラム管を前後左右から見てまっすぐになるように2本のクランプで固定します。クランプにはトイレットペーパーを巻いて、カラム管の外に溶媒が伝わないようにします。

シリカが落ちてこないように綿を詰めます。

カラム管の下の曲面が埋まるぐらいまで海砂を詰めます。

シリカゲルの投入
シリカゲルは、珪肺症の原因になるため危険です。
シリカを扱う際には、手袋マスク保護メガネ
を着用し、できるだけシリカが飛び散らないように作業しましょう。

シリカゲルには、オープンとフラッシュの二種類があります。オープンの方が分離能がいいのでそちらを使用します。

瓶に入ったシリカゲルを隣のビーカーに使用量移して展開溶媒を加えてかき混ぜます。

画像のようになったら固体漏斗を使ってカラム管に入れていきます。

15cmほど展開溶媒をカラム管に入れておいてから、シリカゲルを入れてください!
シリカ内に空気が入り、120%カラムが失敗します

ここまで終わったらシリカがついた手袋を交換します。

シリカゲルを投入したら下のコックを開けます。カラム管をたたいて振動させ、シリカが密になるようにします。シリカの一番上が平らになるように四方八方からたたきます。この時カラム管が曲がっているとうまく平らにならないので注意してください。

平らにする作業がかなり大事なので平らになるように全力を尽くしましょう。


このように水平になっていない場合ムラができてうまく分けることができません
試料が展開溶媒に解けない場合、直接チャージ方法がおすすめです。
2023年5月7日 | test
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海砂の投入

コックを閉じて最後に海砂を投入します。できるだけ平らに詰めるように上から海砂を入れていきます。だいたい1cmの高さになるように入れます。平らになるようにカラム管を叩きます。平らにする作業がかなり大事なので平らになるように全力を尽くしましょう。

チャージ

まず、下のコックを開けて海砂の下まで展開溶媒を流します。海砂を見ておくとだんだん海砂が乾いていくのが分かると思います。海砂だけ乾いた状態ができたらコックを閉じます。

crudeを溶媒で溶かします。

展開溶媒でcrudeを溶かすのが理想ですが、溶けないときは極性溶媒で溶かしてから、非極性溶媒を少しずつ加えて調整します。
溶媒量は、オイル状にならないぐらいの最小量で溶かします。
チャージ量が多くなるとカラムの分離能が悪くなります。

長めの大きいパスツールで吸い取り海砂に乗せていきます。パスツールの先は海砂面にできるだけ近づけた方が側面につきにくく乗せやすいです。海砂に均一にチャージできるようにまんべんなく滴下していきます。

海砂の上、上限1.5cmまでチャージをします。それよりも多くなる場合は、2回に分けてチャージします。

チャージが終わったら、コックを開けてチャージした分をシリカに吸着させます。海砂だけまた乾燥させます。

チャージしきれなかった分と、ナスフラスコに残った分を展開溶媒で溶かしもう一度同じようにチャージします。カラム管の側面についたものを流すようにします。

3回ほどチャージと流すのを繰り返して、シリカにしっかりと吸着させます。

チャージのチェック方法(uvで発光する分子の場合)

海砂のちょっと上まで展開溶媒を入れてuvを当てます。展開溶媒が光らなければちゃんとシリカに化合物が吸着できています。

勢いよく展開溶媒を流すと海砂やシリカが舞い上がってしまうため、海砂付近に溶媒を流すときは注意が必要です。

海砂付近の溶媒の流し方

カラム管の内側に洗瓶の先を付け、瞬間的に溶媒を流して溶媒がカラム管の内側全体に流れるように勢いを分散させます。勢いを分散させることで海砂が荒れるのを防ぐことができます。

展開溶媒が少なくなったら追加していきます。シリカが枯れないように注意してください。溶媒溜めをつける際は、ジョイント部分を固定するのを忘れないようにしましょう。

溶媒の取得

三角フラスコでカラム管から出る溶媒を取ります。適当な量ごとに取っていきます。適量ごと取ったらTLCでほしいものが含まれているかどうか確認していきます。

uvで化合物が光る場合や色がついている場合は、最初の三角フラスコでとり始めるまでTLCをさぼることができます。

TLCは、三角フラスコの交換の直前でカラムの出口から直接取ると効率的にTLCができると思います。

失敗例


TLCを見るとスポットが2個以上出ていることが分かります。こうなったらあきらめてもう一度条件を変えてカラムしましょう。

TLCで上げたときの位置が上の化合物から出てきます。

必要なもののスポットの位置が分かっているときは、それ以外の取ったものは廃液に入れます。ほしいもののスポットが分からない場合は、全部取ってスポットごとにナスフラスコに分けてエバポをかけます。

片付け

ガラス器具の片付け

必要なスポット取れたら、カラムに残っている溶媒を流していきます。二連球で空気を送ることでシリカ部分の溶媒も流すことができ、カラム管にくっつかずにシリカゲルを捨てることができます。

シリカはシリカ専用のごみ箱に捨てます。シリカがカラム管からうまく出てこない時は、カラム管のコックを開けて逆さにしてシリカ用のごみ箱に入れておきます。

カラム管が乾いてシリカが落ちきったらカラム管を洗浄します。カラム管にシリカが残っている場合は、廃液タンクにろ紙を挟んでシリカがタンクの中に入らないようにします。できるだけその日中に片付けると吉。

カラム管は洗浄したら乾燥機の一番下に戻して乾燥したら自分で元の場所に戻すようにします。

使用したドラフトの片付け

ドラフトに散らばったシリカを片付けます。
使用した部分に水道水を撒き、それをトイレットペーパーでふき取ります。3回ほど繰り返すことでシリカを除去できると思います。不安な場合は、手で触ってみてざらざらしなければ大丈夫です。

おまけ

分液漏斗をカラム管の上に取り付けることで、溶媒溜めのように使えます。

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