試薬や溶媒にあらかじめ入っている安定剤を取り除くために沸点の差を利用した蒸留が行われます。
本記事では、蒸留の方法(一例としてCH2Cl2)を説明します。
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前日の準備
前日に、不純物が入らないようにガラス器具を洗浄し、乾燥機でしっかり乾燥させます。
必要なガラス器具
- 二口ナス – 蒸留液体をいれて加熱
- 30-100mlナス – 初留を取る用、蒸留する液体の製品ページから安定剤の量を計算してそれに見合う大きさを選択
- 蒸留還流管
- リービッヒ冷却器
- シュレンク
- 玉栓 – 二口ナス用x1、蒸留還流管x2
- スターラーとスターラーチップ
- ロート – 大きい方が良い
- イヌ
予備乾燥
あらかじめモレキュラーシーブや乾燥剤で不要な水分を除去します。
三角フラスコを準備して、以下のものを入れます。
- 蒸留液体
- 乾燥剤 – CaCl2を砕いて入れる
- モレキュラーシーブ4A(電子レンジで焼いておく、以下参照)
- 攪拌子 – ラグビー型だと回りずらいので、棒型がおすすめ!
スターラーにセットしてその状態で1日攪拌します。ごみが入らないように三角フラスコの蓋をパラフィルムなどで覆います。
電子レンジによるモレシーの乾燥
モレキュラーシーブは、蒸留したいもの1Lに対して100mLをワンサイズ大きめのビーカーに入れて、500Wの電子レンジに40sかけます。一度取り出して、モレシー全体が温まるようにビーカーを振って混ぜます。500w40秒を3回繰り返します。
当日の蒸留
必要なもの
- 洗浄・乾燥済ガラス器具
- ミニジャッキ
- バス(ウォーターバスまたはオイルバス)
- クリップ
- シールテープ
1.組み立て
フラスコが割れるのを防ぐために、スターラーはフラスコを横にした状態で滑らせるように入れましょう。
左側から順番にガラス器具を組み立てます。左下から順に、
ミニジャッキ→スターラー→バス→還流管→リービッヒ冷却器→イヌ→ナスフラスコ→シュレンク
接続部分は外れないようにクリップで固定します。
グリースはコンタミを避けるためにシュレンクの三方コックにのみに塗ります。
ミニジャッキ
ミニジャッキは、高さ調節がきちんとできるものを使用しましょう。
バスは蒸留しているものに併せて液面を下げていく必要があります。また、加熱をやめるときにはナスフラスコを液面から出す必要があるので、ミニジャッキを一番下げた状態で液面からフラスコが出る位置にフラスコをクランプで固定しましょう。
還流管
二口ナスの上に還流管を取り付けます。水道のホースを取り付けます。リービッヒ冷却器が接続しない上の口には玉栓をしておきます。
リービッヒ冷却器
還流管の先にリービッヒ冷却器を取り付けます。還流管とリービッヒ冷却器の接続部分に無理な力がかからないようにクランプで固定します。こちらにはまだホースは取り付けなくて大丈夫です。
イヌ
リービッヒ冷却器の先にイヌを無理な力がかからないように注意して取り付けます。(割れやすいので注意)
ナスフラスコ
イヌの奥側に初留を受けるためのナスフラスコを取り付けます。イヌを回転して最初はこちらが下に来るようにします。ナスフラスコが宙に浮かないようにミニジャッキなどで下を支えます。
シュレンク
イヌの手前側に設置します。ミニジャッキや雑誌で支えます。
2.窒素置換
シュレンクの先に、窒素のホースとポンプと取り付けて窒素置換をします。
ポンプで引いて、窒素を入れるを3回繰り返します。窒素を入れる際は逆流に注意しましょう。
2回目でヒートガンでガラス器具の接続部分を温めて水分を飛ばします。
3回目で接続部分にシールテープを巻いて隙間をなくします。
三回窒素置換が終わったらポンプを止めて、窒素ラインから多めに窒素を流します。
3.蒸留液体投入
オイルバスに浸かっている二口ナスの玉栓を外し、ろ紙を挟んだロートを設置します。ロートが垂直になるようにクランプで固定します。前日に予備乾燥していた蒸留液体をゆっくり投入します。
乾燥剤として水素化カルシウムをスパチュラ大の0.5-1杯分入れます。ペレット状になっているものはろ紙で挟んだ上からハンマーでたたいて砕きます。二口ナスの口に薬包紙を丸めてセットして置くことで入れやすくなります。
4.還流
還流管に水を流して、還流を行います。バスの温度は蒸留液体の沸点付近にします。リービッヒ冷却器に液体が行かないように枝分かれ部分を氷で冷やします。
還流管から、一秒間に2回のペースで液体がしたたり落ちるぐらいを1時間ほどキープします。
5.初留
還流をして1時間経過したら、還流管につけていた氷を外し、水道がしっかりと閉まっていることを確認してホースを取ります。ホースは水がこぼれないように蛇口につながっている方を先に外します。ホースをリービッヒ冷却器につなぎます。水が下から上に流れるようにつなぎます。
初留を受けるナスフラスコが下になっているか確認します。ナスフラスコとイヌを氷で冷やします。
CH2Cl2の場合は、1Lにたいして10mlほど初留がたまったら、本留に移ります。
6.本留
慎重にイヌを回転させてシュレンクが下に来るようにします。(2人で協力推奨)
初留をとったナスフラスコはしっかりと冷やし続けます。輪ゴム等で固定します。
二口ナスの蒸留液体の液面よりも、バスの液面が下に来るように適宜バスの位置を下げていきます。
蒸留液体の高沸点成分が飛ぶ前に二口ナスに溶媒が残った状態で蒸留を終わります。
7.片付け
窒素を大きくふかして、シュレンクを取り外して玉栓をしてシールテープを巻きます。シュレンクはアルミホイル等で巻き、遮光します。「日付、溶媒名、氏名」を記入しておきます。
加熱していたナスフラスコは放冷して、それ以外のガラス器具を洗浄、片付けを行います。